最初の場、ベテラン女優アニェスの相手役のさえ ない俳優、アニェスの夫でもあるイゴールが疲れ切って入ってくる。
役者としてはるかに劣る存在である夫に対し女王のように振る舞うア ニェスだが、その傲岸不遜な言動の中に彼女の舞台女優としての矜恃と誠実さ、舞台に対する確 固たる哲学が含まれていることが、場が進むにつれ徐々に明らかになっていく。
気がつくと彼女の廻りの人間、そして観客はアニェスの 女優としての生き様の力強さに魅了されていることに気づく。
あの暴君のような振舞は、彼女の役者としての本質的部分を守るための鎧のようなものだったのだ・・・。

3月28日終演後　ジャン・ポール・アレーグル　アフタートーク
 「フランスの演劇事情」　〜劇場にて〜　入場無料（アフタートークのみの参加可）

聞き手　渡辺淳（評論家）